【法務DX】電子契約推進のカギは組織横断的コミュニケーションにあり #SaaS導入ストーリー(クラウドサイン×ウォンテッドリー)

2020年、リモートワーク促進のトレンドの中で特に注目された電子契約サービス。同年4月に改正民法の施行により「契約方式の自由」が明記されたことも後押しに、ハンコを押すために出社するという従来の形式が見直されるきっかけになりました。

しかし、契約締結を電子化することで従来の業務フローを変更したり、取引先企業に同意を得たりと、一概に「電子契約サービスの活用」といってもシンプルなことではありません。

今回は、国内での電子契約サービスのパイオニアともいえる『クラウドサイン』を2016年より導入し、早い段階から電子契約を取り巻く運用体制の強化に注力してきたウォンテッドリー社にインタビュー。契約業務だけにとどまらない、他の業務とシナジーを生むDX推進の考え方や取り組みについて、Legalチームの植田さん、Digital Integrationチームの震明さん、林さんの3名にお話ししていただきました。これから電子契約を活用していく担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

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今回のインタビューは、新型コロナウイルスの影響を考慮しオンラインで実施しました。

「契約前後のテコ入れ」で、電子契約を適切に運用

クラウドサインについて語る植田さん
リーガルチームの植田さん|B2Bクラウド編集部

−−貴社は2016年と、かなり早期からクラウドサインを導入しています。電子契約の活用を社員や取引先企業に定着させていくために、どのような取り組みをされたのでしょうか。

植田さん:弊社の取引先はもともとスタートアップ企業が多かったため、もともと電子締結の許容度は高かったのですが、ここ1年くらいでより一層許容度が高まっていると感じています。世の中的にリモートワーク推進や業務のデジタル化推進の機運が高まってきたことで、各社の電子契約導入へのハードルが明らかに下がっているように感じます。

それでも、企業様の中には電子契約サービスを使ったことがなかったり、クラウドサイン以外のサービスしか使用経験のなかったりする企業様も多くいます。一概に電子契約の利用といっても、電子契約に対する理解が低かったり、ワークフローの変更などによる社内の導入コストが高かったりと、各社の障壁となるポイントはさまざまです。

弊社でこうした障壁を緩和するためにできることは限られているのですが、例えば、そもそも電子契約サービスの利用方法が分からないといった取引先に対しては、各ベンダーが公開している受信者向けチュートリアルや電子契約自体の安全性を説明したページのリンクを電子契約利用時にご案内するなどしています。

社員に対しては、2018年にあえて製本・郵送の担当者を廃止して郵送手続きを各事業部のタスクにして、電子契約の活用を自分ごと化しやすくなる環境を整えました。また、社内決裁フローを含めたクラウドサインの使い方については、弊社が全社コミュニケーションツールとして活用しているGitHub上に公開し、いつでもアクセスできるようにしています。

ウォンテッドリーでは現在90%超の契約締結を電子契約でおこなっていますが、このような高い水準を実現できているのは、取引先の企業様の電子契約への理解が高いことに加えて、社内全体の業務効率化やペーパレス化に対する意識が非常に高いことも大きな要因だと思っています。

−−クラウドサインの運用にあたり、苦労されたことはありましたか。また、それらをどのようにして乗り越えたのでしょうか。

植田さん:契約締結のプロセスはクラウドサインの導入のみで完結するものではなく、契約締結前の稟議、与信、反社チェック、契約締結後の契約データ管理などとセットで考える必要があります。電子契約自体を定着させることは比較的容易でしたが、電子締結に至るまでの稟議プロセスが曖昧になっていたり、電子契約をしたあとの情報が一切放置されたり、というように、電子契約を利用した契約全体のプロセスの管理には多くの課題がありました。

また、取引先や契約類型によっては、紙で契約締結を行わなければいけないケースもあるため、紙の契約書から100%脱却することはできません。そうすると、どうしても紙の契約書と電子契約による契約書データをそれぞれ管理する必要がでてきます。他の企業の担当者の方も、媒体の異なるそれぞれの契約書情報をどのように管理するのか、試行錯誤されているところだと思います。

弊社では、クラウドサインが提供しているAPI機能を利用して、締結した契約書データ(PDFファイル)を、自動でGoogle Driveに転送されるフローを構築しています。また、クラウドサイン以外の電子締結サービスで締結した電子契約についても、GoogleのAPIを利用して、Google Driveに自動転送されるようにしています。これにより複数の電子締結サービスを利用した場合であってもデータが一元化されるようになっています。さらに、紙の契約書についても、外部の契約書スキャンサービスを利用してPDF化し、Google Drive上に保存をしているため、現在は、紙と電子すべての契約書がGoogle Drive上に一元管理されています。

Google Driveによるメリットは、契約書の一元管理だけではありません。通常、電子契約サービスにおいては、締結した契約書の中身については検索をすることができないのですが、Google Drive上で管理をすることで、契約書の中身まで検索をかけることが可能になります。契約書のレビューを行う法務担当者としては、過去に作成した契約書の中身を瞬時に検索できるニーズが高いため、メリットとしては大変大きいです。

最近では、リーガルテックの分野においても、各電子締結サービスで締結した契約書データを一つのプラットフォーム上に集約するサービスや、締結した契約書の契約情報をOCR解析やAIを使って分析し契約情報をデータベース化することのできるサービスが登場してきています。こうした情報管理系サービスの登場により、各社の課題がより手軽に解決されることが期待されます。

部署の垣根を超える前向きな議論が、SaaS活用の幅を広げていく

震明さんと林さんDigital Integrationチームの震明さん(右)、林さん(左)|B2Bクラウド編集部

植田さん:弊社では、Wantedlyの各種サービスの申込みにもクラウドサインを活用しています。申込書は、取引先企業の住所、企業名、代表者名など会社ごとに異なる変数が多く、これまでは営業担当が手入力した企業情報を、法務側でクラウドサイン上に再度手入力するというフローがかなり煩雑で、ダブルチェックの工数なども発生していました。

最近ではSlackのワークフロー機能とクラウドサインを連携して、Slack上に設けた情報入力欄への記入項目が、クラウドサインにプリセットしたテンプレートの各欄にも自動的に反映されるようにしました。申込書の送信担当者は、各項目が入力された下書きを最終確認して送るだけなので、転記ミスやダブルチェックの手間が減り、申込書作成の工数が大幅に削減できたと思っています。

クラウドサインの連携機能植田さんの投稿より(同社提供)

−−Google DriveやSlackとの外部サービス連携など、技術的な取り組みも積極的におこなっている印象です。そうした施策は、やはり一般の企業からすると敷居の高いものなのでしょうか。

林さん:クラウドサインと外部サービスとの接続においては、API連携を行うことで、シンプルかつ不具合の少ないオペレーションを構築できました。

クラウドサインは、API仕様書などの各種ドキュメントが充実しています。加えて、開発やテストとしてとして使用できるサンドボックス環境も提供されているため、それらを活用することで、効率的かつ安全に開発することができました。
また実行環境においては、Google Apps Scriptや、Zapierを活用することで、環境構築やプログラミングに必要な工数を大きく下げることを実現しています。

−−そうした発想や施策はどのような体制で生まれ、実現するのでしょうか。

林さん:基本的には、植田から「こういうことができないか」という要望があり、ディスカッションを経て可否を判断したり、どのようなかたちであれば実現できるのかを擦り合わせたりしたのちに実装します。部署の垣根を超えた積極的かつ双方向的な議論が、原案を、より多角的に利益をもたらす最適な案へと昇華させていくと実感しています。

植田さん:API連携に関しては、そもそもクラウドサインが外部にAPIを公開していたり、さまざまな主要なサービスとの連携ができたりすること自体があまり知られていないイメージですね。本来できることが、その可能性を知らないために実現まで至らないというケースも多いのではないかと感じています。

法務担当の私がそのような可能性を見つけるためには、開発メンバーである林を含め、部署横断的なディスカッションが必要です。SaaSをどのように活用するかというアイデアは、サービスを活用して何ができそうか、多角的な視点から話し合うことで生れてくると思っています。

震明さん:私は2人とはまた別の視点で、ビジネスディベロップメントの立場から同じくクラウドサインの活用に携わっています。クラウドサインを活用することでどのような契約ケースでもシームレスに対応できています。また、契約内容を後から見返したいという時も、先ほど植田が伝えたGoogle Driveでの管理によって契約書内容の検索ができるため、非常に助かっていますね。

今後は、システムの連携範囲をさらに広げていきたいと考えています。例えばCRM内で、セールスステージが「受注」ステータスになったら企業情報を連携し、クラウドサイン上で申込み書の下書きを自動発行する、というような仕組みもつくりたいと思っています。クラウドサインをはじめとしたあらゆるサービスをうまく活用することで、よりスピーディかつミスの少ないオペレーションを実現し、契約手続きの面からもお客様との信頼を醸成していきたいと考えています。

役割に固執しない!リーガルデジタル化から学ぶ、業務への向き合い方

これからの電子契約について語る植田さんB2Bクラウド編集部

−−これから契約締結の電子化を進めていく担当者は、どのようなスタンスが求められるのでしょうか。

植田さん:契約フローは、顧客と接点を持つ事業部を起点として、経理による与信・反社チェック、法務での契約書レビュー、稟議、契約締結、契約管理と、様々なフローを経て完結するものです。契約フローのDXを推進するためには、こうした複数の部署の利害を調整しながら、横断的に進めていくことが不可欠です。

また、電子締結をはじめとする法務周りのフローのDXを推進するためには、法務組織であっても契約レビューのような伝統的なスキルを持つ人材のみならず、震明・林のような業務改善や開発のスキルを持った人材と一緒に組織作りを進めていくことが必須になっていくことでしょう。こうした体制を持つことで、クラウドサインをはじめSaaSの本来のポテンシャルが最大限に発揮され、法務人材も自分のリーガルマインドを活かした業務に注力できるようになるのではないでしょうか。

−−植田さん、震明さん、林さん、ありがとうございました!

インタビューを終えて

いかがでしたでしょうか。SaaSというと、一つの部署がオーナーシップを持って運用するというイメージが一般的かと思います。ウォンテッドリー社では契約業務の本質を捉え、電子契約にまつわる部署横断的な取り組みを、業務改善や開発のスキルを有する人材と二人三脚でおこなっています。その根底には、各担当者が自分の役割を認識しながらも決してそれに固執せず、組織でのシナジーを生むことに前向きなスタンスがありました。

これから契約業務の電子化に取り組む担当者の方、すでに電子契約サービスの導入をしている担当者の方はぜひ、電子契約サービスのポテンシャルを最大限活用するための参考にしてみてください。

今回の #SaaS導入ストーリー はここまで。次回も楽しみにお待ちください!

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